「無縁から支縁へ―宗教者に何ができるか―」報告
このミニシンポジウムは、2024年8月31日に開催予定だったが、台風10号の接近のため、同年12月7日に延期されて開催の運びとなった。これは、発足以来の共同代表だった渡辺順一金光教羽曳野教会長の逝去に伴い、その遺志を新たに展開する意味で企画された。メインは、今回新たに共同代表になった三浦紀夫ビハーラ21事務局長、岩村義雄神戸国際支縁機構代表による活動実践報告である。
三浦紀夫氏が事務局長を務めるビハーラ21は、仏教をベースに高齢者の介護保険事業及び障害福祉事業を展開している。三浦氏はまた、地域共生とグリーフケアの聞法会館「あかんのん安住荘」代表として地域に根ざした“支縁”活動を行っている。報告の中で、三浦氏は独居高齢女性のケア事例を紹介した。その女性が熱心な阪神ファンだと聞いて甲子園まで連れて行き、そこで信頼関係を得ることができ、看取りと葬儀まで行ったという。地域で様々な問題を抱える人に、宗教者が丁寧に向き合うことこそ、社会を無縁から“支縁”へと変える筋道になることが示唆された。
岩村義雄氏が代表を務める神戸国際支縁機構は、広く海外及び国内の被災地などで様々な緊急救援や自立支援活動を行うことで、アウトリーチ型の“支縁”活動を展開している。岩村氏は、能登半島地震に際しては、公的支援がいまだ不十分の中、またボランティア制限が報じる中を直ちに現地入りし、2024年だけで13回赴いて炊き出し活動などを行った。生き埋めになって亡くなった被災者の姿に強い衝撃を受けた。災害の大きさや悲惨さはしばしば被災者数で表されがちであるが、かけがえのない一人ひとりの生死や苦しみがそこにあることを忘れてはならない。宗教者は聖書でいう「無に等しい人々」に寄り添うことで、無縁社会を“支縁”社会へと再構築する役割を担うべきことを訴えた。
この後、村上辰雄上智大学准教授が国際救援や福祉論的な見地から、また中西尋子大阪公立大学都市文化研究センター研究員が宗教社会学の見地から、それぞれコメントを行い、会場も交えて活発な質疑応答と意見交換が行われた。(金子昭 記)