活 動 記 録

支縁のまちネットワーク第3回公開学習会
日時 2014年11月25日(火) 16:00~17:30
場所 西成市民館
演者 三浦紀夫
(NPO法人ビハーラ21事務局長、ビハーラ僧、浄土真宗大谷派僧侶)
演題 「無縁多死時代における宗教者の役割
―ビハーラ21萩之茶屋事務所開設と臨床宗教師の可能性」


2014年11月25日、西成市民館にて開催された支縁のまちネットワーク第3回公開学習会では、高齢者や障がい者の居住・介護支援をおこなう市民団体「NPO法人ビハーラ21の三浦紀夫氏から2つのテーマに基づき発題していただいた。

 前半はビハーラ21の設立経緯・活動内容が論じられた。以下、その概要である。2003年に宗教・宗派を超えて看取りの実践をするためにビハーラ21が設立。2006年に自立支援マンション「シェアハウス中井」(大阪市平野区)が活動の拠点となった。2008年には介護部門が発足し、介護事業とビハーラ活動のコラボレーションが進んだ。現在はシェアハウス中井から離れ、大阪市平野区・旭区・生野区に「ビハーラ住宅」を設置し、入居者支援をおこなっている。また、本年から単身高齢者が集住する西成区萩之茶屋(釜ヶ崎)にも事務所を設置し、新たな活動の方向性を模索している。

 ビハーラ21の支援対象者の多くは独居高齢者であり、法話会や盂蘭盆会といった仏教行事は信仰の有無に関わらず、概ね評判がよい。特に一人で死にゆくことを案じている入居者にとっては、多くの人々に見守られながら最期を迎え、その後も継続的に弔われる様子を目の当たりにすることで安心感をおぼえるとのことである。

 三浦氏はビハーラ21の活動経験から、介護の現場にビハーラ僧が参画することの意義と可能性を強く主張された。介護保険制度のもとでは、介護士が提供できる支援は限定的であり、その隙間の部分をビハーラ僧が埋めることができるとのことである。最期の看取りはもちろんのこと、その前の段階の生活からビハーラ僧が関わることで入居者との信頼関係も構築しやすいことが示された。

 後半は臨床宗教師という新しい人材養成の背景と現状が論じられた。以下、その概要である。臨床宗教師は超宗教的な立場から人々のケアをおこなう宗教者の総称で、2012年からその人材養成を東北大学大学院でおこなっている。今年度からは龍谷大学でも人材養成をおこなうようになっており、臨床宗教師の養成プログラムには全国から多くの宗教者が集まっている。一方、活動の場が限られていることが問題となっている。

 臨床宗教師として養成された宗教者が自身の所属する寺、神社、教会などを拠点に活動することも大事だが、それらとは違う領域―たとえば医療や社会福祉の現場―に足場を築き、異なる専門領域の協働機会を高めていく必要が主張された。

 三浦氏が約1時間の報告を終えた後は、参加者(計15人)との質疑応答・ディスカッションがおこなわれた。そこでは、「専門分化が進むことの問題性」、「対話だけでケアをおこなうことの限界」、「宗教者自らがソーシャルワーカーになることの可能性」などが語られた。

⇒ ビハーラ21のHP [http://www.vihara21.jp]

20141125