活 動 記 録

支縁のまちネットワーク第8回公開学習会
日時 2017年7月29日(土)14:00~17:00
場所 大阪市北区
講師 吉村智博氏(日本文化研究センター客員准教授)

 

7月29日フィールドワーク記事(新宗教新聞2017年8月28日号) 支縁のまちネットワーク初めての試みとして大阪キタのスタディツアーを実施した。
吉村氏の『かくれスポット大阪』(解放出版社、2013年)、『続かくれスポット大阪』(解放出版社、2015年)に基づくスタディツアーだが、とくに歴史的に「大坂」が形成される過程で中心ではなく周縁部に配置されていったものを巡るものとなった。

 まずは扇町公園に集合。
大阪市営の広々とした公園であり、市民の憩いの場になっているが、江戸時代には刑場があり、明治には大阪監獄が置かれたと吉村氏から説明を受けた。
次に訪れたのは扇町公園すぐそばにある更生保護法人「和衷会」。
ここは出所した成人男子の一時滞在の更生保護施設であり、国内最大規模。
1912年に四天王寺などの在阪の寺院が協力して設立された。
施設紹介のDVDを視聴してから職員の方から説明を受けた。
入所者には個室が与えられ、午前5時40分の開門から午後10時の門限まで出入り自由。
ハローワークとも連携し、入所者は仕事と住む場所を確保し、平均2~3か月で退所するとのこと。

 少し歩いて綱敷天神社へ。
嵯峨天皇と菅原道真を主祭神とし、大阪の「キタ」・梅田の氏社である。
すぐ近くには金光教扇町教会(明治42年設立)がある。
その後、中崎町にある大阪市立済美小学校跡、舟場地区、大坂七墓のひとつである南濱墓所などを巡った。済美小学校は2004年に扇町小学校に統合されて閉校になり、現在は跡地に15階建ての大型マンションが建つ。
舟場地区には大阪大空襲の戦火を免れた約100年前の建築様式の木造家屋が立ち並ぶ。壁面には「中崎西三丁目」という現在の町名表示板のすぐ横に「舟場町」と記された旧町名の古びた表示板が残っていた。

 南濱墓所の西側入り口には地蔵堂があり、「行基菩薩開基南濱墓所」「道引之地蔵」と記された石碑がたつ。
大正時代に大阪市に移管され市設南浜霊園になったが、墓石に刻まれた年号には寛政、享和、天保などの文字が見られる。
墓所は周囲をビルやアパートに囲まれており、南側大通りの「市設南浜霊園」と掲げられた門扉を見なければ、このような場所に古い墓地が残るとは誰も気づかないのではないだろうか。

 最後は天神橋筋六丁目の大阪市立住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」へ。
この場所はもともと大正10年設立の日本で最初の公立セツルメント(隣保館)である「北市民館」があった場所であり、1階入り口を入ったところには北市民館の模型が展示されている。

 大阪キタは関西の行政・経済・交通の中心地であり、梅田には華やかな商業施設が立ち並ぶ。
しかしその一方で、大阪の昔を物語る事物がこれだけ各所に、まるでそこだけ時間が止まったかのように点在するとは思いもよらぬことであった。

 参加者は14人、東京からの参加者、台湾の大学院生の参加もあった。
暑いさなかであったが、有意義なスタディツアーとなった。

(報告:中西尋子)